ジェームズ・エーネスの「無伴奏ヴァイオリン」(4):〈パルティータ第2番〉

Q.《無伴奏パルティータ第2番》について

A.無伴奏パルティータ第2番は、やはり最後の〈シャコンヌ〉で知られていますね。

バッハ最高の業績と言われることが多いです。

組曲全体が素晴らしいコンサート用作品で、〈シャコンヌ〉は単体でも演奏されますが、曲全体の関係で見ると、その重要性はより高くなります。

この作品には、何か蓄積していくものがあって、時間の感覚がおかしくなってしまうんですね。

音楽が持っている素晴らしい性質の1つだと思うのですが、〈シャコンヌ〉は大変長い曲なので、その前の4つを聴いただけでは、全体がどの程度の長さだったのか分からなくなってしまうんですね。

曲の長さと早さによって、変奏がまだまだ続くと思ってしまうんです。

バッハの音楽、中でも〈シャコンヌ〉は、特に演奏家として大きな喜びを感じます。

曲に命を吹き込む者として、内側から曲について知ることができます。

演奏しないリスナーとして曲を満喫できたらいいな、と思うことがあります。

なぜなら〈シャコンヌ〉は、曲の構造を弾き始めた瞬間から分かっていないといけません。

全体を通して、どのような形なのか分かっている必要があります。

弾き始めて「ここはこうしようかな」「こっちはこうかな」とはできないのです。

これから何をするか、正確に分かっていないといけないんです。

例えば、ツアーに連れて行ってもらうとします。

美しい建物や街のガイドをする人は、どこで何を見せるかは分かっていますよね。

そして、それを見て参加者がどんな気持ちになるのかも分かっています。

ガイドは、同じ道のりでも、また違った経験をするんです。

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※エーネスのオリジナルな回答は英語で、ここに転載した日本語訳の字幕は、画面表示可能な文字数の制限などの理由から、エーネスの発言内容や意図を、全て正確に訳している保証は無い、という前提がある。