健忘

未来は暗い。

先日のことである。夜中に目覚めた私は狼狽した。いつ寝たのか思い出せないのである。昼飯の後、何したっけ? どうやら夕食も食わずに寝てしまったらしいと思いながら立ち上がり、とりあえずトイレに行く途中で思い出した。

夕食食ったじゃん!

生蕎麦を茹でた奴に野菜とかブチ込んで、後は餃子とシュウマイとか。きちんと食って艦これとかやって録画していたアニメ見て、それから寝たじゃないの。つまりいつもの一日の終わりだったのだ。

だが起きた直後はそれが完全に頭から飛んでいた。正直、夕方以降の記憶がまったくなかった。一時記憶の喪失というレベルじゃない。だって私の記憶では夕方からそのまま起きた状況に繋がっているのだ。

これが噂に聞く「健忘」なのだろうか。高齢化すると、朝食食った直後にまだ飯が出ないのはなぜかと息子の嫁に食ってかかるというアレか。今までそんな馬鹿なとか思っていたけど、今なら頷ける。だって記憶の接続が完璧なんだよ。

私の場合、幸い息子夫婦と同居していたりしないのでそういう誤解を生まないのが幸いだが、今後は用心しないといけない。飯だけでなく、何か重要な事をやってから忘れたり、それ自体を忘れてしまったりすることが増えるかも。

昔読んだSFに、大型客船が内部に空気が残ったまま沈没して取り残された乗客たちが海底に鎮座した船の中で何代にもわたって生き続けるという有り得そうにも無い話があったが、生存者たちは高齢化してもボケないという設定だった。

というのは娯楽に類するものが一切ないので、そこに住んでいる人たちは客船にあった巨大な図書館の本をひたすら読み続け、そのために頭が活性化して死ぬ寸前まで頭脳明晰だったわけで。

私もひたすら本を読んでいるので高齢化してもボケないと思い込んでいたんだけど、やはりあれは絵空事だったらしい。もっとも私の読むような話(ラノベとか)では頭脳を活性化できないのかもしれないけど。

だからといって今さらニーチェとかヴィトゲンシュタインとかを読めと言われてもなあ。出来ない事もないけどつまらん。あれらは無理に読めば異世界とか超人とか平行宇宙とかを彷彿できなくはないと思うのだが。

面白くないから却下。